写真 井上嘉和
comment about ABITA____________________
“空間を創る、両極を混ぜる、そして境界線を溶かす”−−nakiceのそんな言葉が印象的だった今年2月、渋谷JINNAN HOUSEでのアーティスト・トーク。その2カ月後に同じ場所で体験した『ABITA』は、まさにそれを体現し尽くしたものでした。映像、音、身体そして雑多な「モノ」の集合体による、言語化不能の異空間がそこに。
安藤誠/LAND FES
写真機というモノを通して覗く「ABITA」
2021年沼津から始まって、2022年春のJINNAN HOUSEでは8時間×3日間のパフォーマンスインスタレーションを共に過ごした。
nakiceが試行錯誤してたどり着いた水写真。プリンターという精密機器さえも同等にモノとして甘やかさない技法。産み落とされた水写真には、濃密なシンクロの瞬間がノスタルジックな家族の風景として浮かび上がった。
咀嚼して受容して乖離して咀嚼された創作の通過点。
限られた時間枠の中で表出するであろう濃密な時間を想像すると、体感しないわけにはいかない。感覚の端に触れるモノを共有出来る、貴重な場となるはず。
写真家/三浦麻旅子
日時
12月16日(金)19:00開演
12月17日(土)19:00開演
12月18日(日)17:00開演
会場|京都芸術センター 講堂(アクセス https://www.kac.or.jp/access/)
出演|シマダタダシ 藤代洋平 奥野美和
照明|渡辺佳奈
舞台監督|小林勇陽
記録|岡田琉生
協力|ULTRA_Sandwich #18
主催|nakice、京都芸術センター(公益財団法人京都市芸術文化協会)
助成|文化庁 ARTS for the future! 2 補助対象事業
問合せ先|info@kac.or.jp
公演HP|https://www.kac.or.jp/events/32609/
関連企画
ダンサー・振付家の捩子ぴじんさんをゲストに迎え、出演ダンサーシマダタダシ、nakiceとのプレトークを開催。
※本ページ内にて動画公開中。
creation note
からだをつくっている細胞は5年もたつとほとんどの部分は入れ替わる
原子や音、光、重力も全て振動している
人間がもっている周波数を音に置き換えるとおよそ42オクターブになる
あの時感じた不思議な感覚は、目には見えないが確実に起こっているこれらの現象が関係しているのか、そして普段の生活で普通に感じていることでさえこれらの現象の上になりたっているのか、複雑にみえて実はとても単純なことなのか、いやその逆なのか。
考えてみてもわからないが、また“あの時感じた不思議な感覚”は呼び起こすことは可能なのかもしれない。
私達は「N///K」という名前で主に舞台空間で表現をしてきたが、より限定されない空間や表現へと移行するため「nakice」という名前に変化し、
-その場にあるモノやその場の環境 その場で起こる現象に カラダやモノはどのように反応するのか-
という実験のようなものが今に続いている。それを『ABITA』と名付けた。
『ABITA』は、家にあるモノたちを他の空間に運び、1つの振付けや音が出来ていく過程をそのままパフォーマンスにした公演「ABITA@cafe MURIWUI」から始まった。(2020年|祖師ヶ谷大蔵)
家にあったモノやその場にあるモノたちが混ざり合った空間。その環境や様々な現象からの影響をその場で感じ反応する、という大きなヒントと可能性を得た。
その後、店舗の入っていないコンクリート剥き出しのビルのワンフロアという環境での映像作品「ABITA@沼津」(2021年|静岡)
〈細胞が入れ変わるように その場所にあるモノが 完成もなく変化し続ける〉というキーワードをもとに、8時間×3日間のパフォーマンスをしたインスタレーション「ABITA@JINNAN HOUSE」(2022年4月|渋谷)
高滝湖のほとりにある市原湖畔美術館での企画展『試展-白州模写 「アートキャンプ白州」とは何だったのか』の関連企画として制作現場を公開する”nakice ワークショップ”(2022年11月|千葉)へとつながっていった。
そして現在、『ABITA@京都芸術センター』は、スタジオSANDWICH(2022年8月|京都市伏見区)にて行った事前制作、1ヶ月間の京都芸術センター制作室での創作を通し、パフォーマンス公演という更なる形へと向かっている。
テキスト nakice
profile
シマダタダシ
神奈川県出身東京都在住。
メソッド演技を学ぶ中で身体表現と出会い、ダンスのキャリアをスタートする。鈴木知久に師事。
日々の生活にまみれた身体性や感情の記憶をベースに自己のスタイルを追求。
都会の片隅に在る一つの現象として捉えた自身の存在とその表現をEdgeofthecityと称し、日々の移ろいを身体を軸に探究している。
パフォーマーとして、nakice「ABITA」、SC∀L∃R「齢instar」に参加し活動中。
藤代洋平
物と音
奥野美和
3歳よりモダンバレエを始める。2009年よりソロ活動を開始。
骨と肉に着目し”自由になる為に解体された身体”コンセプトに国内外にて活動し、自ら映像や美術を手掛け総合的な空間創りを目指す。
横浜ダンスコレクションEX2013にて若手振付家のための在日フランス大使館賞、MASDANZA賞、MASDANZA18(スペイン)にて審査員賞を受賞。
2015年、東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻に入学し、身体表現/パフォーマンスアート/インスタレーションの間に成立するbody installationの文脈を探る。
ダンス作品の創作、演劇作品への参加、ピラティスの資格取得などの経験を経て、近年は〈ダンス〉の分野から〈カラダ〉の本質に着目し、身体から派生するあらゆるモノゴトへの可能性を掘り下げ中。
nakice
2014年より奥野美和と藤代洋平が主宰するダンスカンパニーN///Kでの活動を経て、2022年より京都に拠点を移し、パフォーマンスアートと美術の文脈の間に成立する作品を目指し新たに設立した団体。身体・人工物・自然物などをメディアとして扱い、身体表現と美術表現を横断する展開を目指す。
https://www.nakice.com